あらすじ
「女神だと思っていた少女は、人間だった。」
剣道部に所属する高校生・天笠昴は、いつも女難に振り回される冴えない少年だった。
気が強い女性ばかりに囲まれ、家では家事を押し付けられ、学校でも都合よく扱われる日々。
そんな彼が唯一抱いていた願いはただ一つ。
――「静かで優しい、大人しい女の子と出会いたい」
ある日、疲れ切った昴は車庫行きの電車で眠り込む。
そこで出会ったのが、少女・小暮鈴だった。
偶然触れた肩、ふと見上げた笑顔。
その一瞬は、昴にとって“女神”そのものだった。
しかし、運命は甘くない。
再会した鈴は、昴の幻想とは正反対の少女だった。
強く、冷たく、そしてどこか壊れた現実主義者。
「私は女神じゃない。人間よ」
その言葉は、昴の中にあった“理想の少女像”を容赦なく打ち砕く。
だが鈴には、誰にも言えない現実があった。
父の蒸発、母の失踪。
残されたのは幼い双子の弟たちだけ。
生きるために、彼女は「選ばざるを得なかった道」を歩いていた。
そしてその歪んだ日常は、やがて“見えない悪意”に絡め取られていく。
――ストーカー教師。
優しい仮面の裏に狂気を隠した男は、鈴の人生を静かに侵食し始める。
無言電話、尾行、盗撮、噂、孤立、そして誘拐。
「愛している」という言葉が、最も危険な呪いに変わるとき、
少女の世界は崩壊寸前まで追い詰められていく。
そのとき、冴えないはずの少年は“剣を持つ者”として目覚める。
弱く、情けなく、何も守れないと思っていた昴。
しかし彼は気づいていく。
――守るという行為だけが、人を強くするのだと。
恐怖に震える少女と、女難に怯えていた少年。
二人はそれぞれの“弱さ”を抱えながら、
崩壊する現実の中で、互いに唯一の支えとなっていく。
やがて訪れる最上階の対峙。
愛が歪み、執着が狂気に変わった男との決着の中で、
鈴は選ぶ。
「私はただ、生きたかっただけ」
その一言が、狂気を止める鍵となる。
そして昴もまた知る。
女神などいなかった。
救うべきは幻想ではなく、“目の前の人間”だったのだと。
これは――
女神を探していた少年が、人間を守る物語。
そして、人間だった少女が、誰かに守られることを初めて許す物語。
星は昴。
音は鈴。
バラバラに見えた二人は、
確かに引き合っていた。
――それでも僕は、彼女を守りたかった。