あらすじ
神殿の婚姻受理院で働く下級神官ルカは、竜の血を引く皇太子レオニスと隣国王女セリアの婚姻届を審査することになる。十年続いた国境争いを終わらせるための、国中が待ち望む政略結婚だった。
ところが、婚姻届に触れた瞬間、ルカの左手首に銀の竜紋が浮かぶ。そこに刻まれていたのは、皇太子レオニスの名。竜族の「運命の番」にだけ現れる紋だった。
神官は皇族と私的な関係を結んではならない。ルカは紋を隠し、婚姻届を受理しようとする。しかし、レオニスはルカが番であることを見抜く。それでも彼は、国のために王女との婚姻を受け入れるつもりでいた。
婚姻届の文言に違和感を覚えたルカは、神殿地下の禁書庫で調査を進める。そこで、契約書に「竜核封印」の呪いが仕込まれていることを知る。婚姻が成立すれば、レオニスの竜の力は封じられ、やがて命を落とす。神殿上層部は、強すぎる竜皇子の力を恐れ、政略結婚を利用して彼を無力化しようとしていたのだ。
公開婚姻式の日。大神官、貴族、隣国使節、民衆が見守る中、ルカは隠された呪いを告発し、受理印ではなく不受理の印を押す。王女セリアもまた、自分が呪いの媒介にされていたことを知り、婚姻契約の無効を認める。
その場でレオニスは王冠を外し、ルカの前に跪く。
「神官ルカ。俺の婚姻を、もう一度審査してくれ」
差し出された新しい婚姻届には、レオニス自身の手でルカの名が書かれていた。ルカはその書類に嘘も呪いもないことを確認し、今度こそ受理印を押す。
不受理の印は、二人の終わりではなく、始まりになった。