あらすじ
辺境の寒村アッシュ村。雪解けの泥道に行き倒れていた転生者ユウは、村に拾われ、守衛として生きる道を得た。
だが、現実は残酷だ。夜には飢えた狼が柵を囲み、石切り場では事故が絶えず、山道では賊が荷を狙う。
魔法はこの世界に存在するが、すべてを救えるほど万能ではなかった。
「俺は、英雄にはなれない」
一振りで魔物を断つ剣術も、空を焼く魔導の才能もない。
前世の記憶すら、断片的な雑学ばかり。 けれど、ユウには執念があった。
一人の奇跡に頼るのではなく、誰でも扱える「手順」を作り、村全体で守る「仕組み」を築くこと。
厩舎に浮く白い粉、硫黄の臭い、木炭の質。
バラバラだった知識を、現場の知恵と魔法の補助で繋ぎ合わせ、ユウはこの世界における未曾有の力――『工術(こうじゅつ)』を立ち上げる。
これは、破壊の火で守り、やがてその先にある“真の救済”へと辿り着くまでの、泥臭くも鮮やかな管理の記録。