あらすじ
帝都の北、飛鳥山の奥に妖気あり——陰陽寮からの依頼を受け、式神使いの陰陽師・石動皓夜は夜の森へと向かった。
そこにいたのは、九本の尾を持つ妖狐。帝都に巣くい、人を喰らい、千年前に陰陽師に封じられた怨みを晴らさんとする、絶世の妖——クガ。
しかし皓夜の口から出た言葉は、祓いの呪ではなかった。
「……たまき」
真名を呼ばれた妖狐は、挑戦的な紅の微笑みを浮かべながら言った。「よくぞ我が真名を言い当てた、陰陽師。だが、これでますます、お前をこのまま無事に帰すわけにはいかなくなったぞ」
皓夜の血の底が、知っていた。この妖狐のことを。そしてこの夜の、終わりを。
セイメイの血を引く陰陽師と、クガの系統の九尾の妖狐。二つの勾玉が触れ合う時、玉響が鳴る。そして——魂が揺らぐ、ほんのわずかな時間の後、二人は玉に還る。
これは千年前にも起きた。また千年後にも起きる。
永劫に繰り返される、宿命の再会の物語。