あらすじ
廃嫡寸前の次男騎士、リオン・グランフェルト。
家では厄介者として扱われ、任務では捨て駒同然に前線へ送られる彼には、ひとつだけ異質な力があった。
それは、戦場に走る“線”を見極め、越えさせてはならない一線を止める《界線術》。
ある日、リオンは輸送隊護衛の任務中、味方から「後列三台は捨てろ」と命じられる。
そこには負傷兵が乗っていた。
切り捨てれば楽になる。
命令に従えば、家の面子も守れる。
だがリオンは、剣を抜く。
「後列は捨てない。荷を守るな、人を守れ」
襲撃を退けたリオンだったが、戦いの後に待っていたのは称賛ではなかった。
消される証拠。
未処理箱へ落とされる報告。
末端の兵に押しつけられる責任。
そして、事件そのものを都合よく閉じようとする者たち。
だがリオンは、戦場だけでなく、検分場でも一歩も退かない。
札を止め、票を残し、証言を正面に出す。
切り捨てられるはずだった者たちの名を、記録の上に残していく。
そんな彼の姿を見た女騎士リゼット・アシュベルは、ただ庇われるのではなく、自らも「見た責任」を背負って隣ではなく、自分の位置に立つことを選ぶ。
これは、家に見限られた次男騎士が、
捨てられるはずだった兵を救い、
隠されるはずだった真実を暴き、
戦場と軍務の中で己の名を刻んでいく物語。
剣だけでは終わらない。
魔法だけでは勝てない。
紙の上で消される命まで、彼は決して未処理にはさせない。