あらすじ
反逆罪で投獄された悪役令嬢アネット・クロイスには、死刑執行まで六十日あった。
前世の記憶がある。精神科医、柏木 遥。患者に首を絞められて死に、この世界に転生した。
やり込んだ乙女ゲームの世界だとすぐにわかった。アネットは処刑される——それもわかっていた。
逃げようとは思わなかった。冤罪かどうかも確かめようとしなかった。
ただ、扉の前に立つ衛兵が咳をした。乾いた、苦しそうな音。
いつから続いているんだろう。夜、眠れているか。
職業病だ、と思いながら。死刑まで何日あるかより先に、それを考えていた。
六十日、できることがある。それだけでよかった。