あらすじ

紅茶のカップに、銀の蓋を載せる。 それが、ヴェルネシア王国の貴婦人が、会話を打ち切る作法だった。 半年前に婚約を破棄されたクラリスは、離れの一室で、その蓋の音だけを友に暮らしていた。 届いた一通の書面は、元婚約者からのものだった。 過去の誤解を、水に流そう。 高慢な文面の余白に、見知らぬ隣国公爵の名が、小さく添えられていた。 クラリスは、短い一行だけ返す。 さすがにこれは、お断りしたく存じます。 その返事を王子が読む前に、離れには、隣国の公爵が訪れていた。 彼は名乗り、紅茶の産地を当て、用件は何もない、と告げて帰った。 知らないはずの男が、知らないはずのことを、知っている。 半年のあいだに、誰が、何を動かしていたのか。 そして、この静かな人は、なぜ、自分に近づいてきたのか。 蓋の載らない紅茶のカップが、冷えていく。 答えは、まだ、どこにもない。

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小説を読もう2026/04/24
  • 現在の作品さすがにこれは、お断りしたく存じます