あらすじ
「ルーチェ・アルヴィス嬢、あなたとの婚約は本日をもって解消とさせていただきます」 言われた瞬間、前世が総務担当だった付与術師ルーチェが真っ先に考えたのは——今夜の夕飯のことだった。
悲しむ暇があるなら動け。それが前世から染み付いた本能。
翌朝、ルーチェは荷物をまとめて王都を出た。
目的地は、祖父から相続したままにしていた辺境の廃村。
現地は予想の三倍ひどかった。でも水脈はある。土は悪くない。
段取りさえ組めばなんとかなる。
婚約破棄された令嬢は、泣く代わりに付与術で井戸を掘り、畑を整え、家屋を修復し——気づけば廃村に人が集まり始めた。そして、ずっと遠くからこちらを見ていた人が、ある日馬を降りて歩いてきた。「お前のことが、好きだ」 辺境の侯爵は静かに言った。婚約破棄された日から、ずっと——見ていたのだと