あらすじ

神崎暁は研究施設で十八年間を過ごした。素手で人に触れてはならない。それだけが暁に与えられたルールだった。 手袋をはめた両手。窓のない部屋。感情の名前を知らないまま、暁は東京大学に入学する。 講義室でいつも同じ席に座る暁の隣に、桐生誠が座った。物理学科の三年生。穏やかな顔をしているのに、目だけが時々鋭い。 撫でられると思考が止まる。わらび餅を食べると肩の力が抜ける。カルアミルクを三杯飲むと世界が溶ける。暁の定数だった日常に、桐生という変数が増えていく。 けれど暁は知っている。自分の素手は毒であることを。触れた時間の分だけ、桐生を壊していることを。 触れたい。触れてはいけない。その閾値を、暁はまだ知らない。

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カクヨム
カクヨム2026/04/23
  • 現在の作品見えない閾値 ─ 僕の存在は毒だから ─