あらすじ

国分寺には、地図に載らない時間帯がある。 終電のあと、街が少しだけ裏返るときに現れる場所――裏国分寺。 影人、精霊、ミュータント、迷い人。 名前を失くした存在たちは、この街の路地や駅に流れ着き、 「どうすればよかったのか分からないままの悩み」を抱えて立ち止まっている。 りゃんシーは、香草庵という小さな場所で処方を行う。 それは薬でも、魔法でも、正解でもない。 蒸留された霧、瓶に詰めた煙、靴下や香草、触れるだけの手技。 処方はときに効き、ときに効かず、ときに事態を悪化させる。 この街では、すべてが解決されるわけではない。 ありがとうと言われない夜もある。 処方を拒むことも、失敗することも、代償を払うこともある。 それでもりゃんシーは、問いを急がない。 治すためでも、正すためでもなく、 「まだ消えていない」と示すために処方を置いていく。 『裏国分寺処方録』は、 救済譚でも、成長譚でもない。 誰にも回収されなかった感情と、 名前を持たない選択肢の記録である。

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エブリスタ2026/04/26
  • 現在の作品裏国分寺小話帖