あらすじ
アサギマダラの妖精であるジャドは満開の桜の木の下で、桜色の少女と出逢う。桜の木の枝を宿した少女は桜前線――瞬時にジャドの脳裏に言葉が甦り、少女をスリジエと名付けた。
スリジエは感情をなくしていたが、人々の生活を見ていくうちに、喜怒哀楽を思い出していく。二人は春が終われば別れなくてはいけないなどと思いもしない。
ある時、アサギマダラは冬を越せないと人伝いに聞いてしまう。それはジャドも知らなかった事実だった。春にしか現れない桜前線と、秋までの命のアサギマダラ。嫌でも別れを意識してしまう。
口数が少なくなってしまったところで、寒波がやってくる。命を守るため、ジャドは一時南下することに。スリジエと離れ離れになってしまう。
自分は何故、次の春を迎えられないのか。どうしてスリジエと出逢ってしまったのか。淡い恋心を抱き始めていたジャドに、苦悩の時間が訪れる。
しかし、春は待ってはくれない。寒波が抜けた時、ジャドはスリジエに好きだと伝えるためだけに再び北上を始める。散った桜を見つけては涙を零す。
ジャドがスリジエに追いついた時には、桜前線の最北端を迎えていた。出逢った時と同じく満開の桜の下で佇むスリジエに手を伸ばすが、桜吹雪と共にスリジエの姿は消えてしまう。ジャドの手の中にあった桜の花びらだけが、スリジエのいた証だった。