あらすじ
瀬名透は、事故物件や廃ビルの残置物を片づける仕事をしている。
彼は他人の死にも、孤独にも、怒りにも深く触れない。
ただ、部屋に残された物の配置だけを読む。
一本だけ違う歯ブラシ。使われていない椅子。閉まりきっていない引き出し。
人間そのものではなく、人間が残した痕跡だけを見て生きていた。
ある日、瀬名は解体前の旧白鷺育英財団施設に向かう。
本来は立ち入る予定のなかった五階。
そこにあったのは、誰かが作ったように整いすぎた「生活の模型」だった。
そして図面にない地下室で、彼は久遠ミカという少女と出会う。
彼女は助けを求めなかった。
怯えもしなかった。
ただ、瀬名を見て言った。
「あなた、迷わないんですね」
管理された救済を掲げる白鷺会。
自由の名で人を扇動するネスト。
その対立すら観測する謎の組織アーキヴ。
瀬名とミカは、誰かに配置されたように出会い、逃げ始める。
何も持っていない男と、どこにも分類できない少女。
二人が辿り着くのは、救済でも革命でもない。
空白の王国の、その外側だった。