あらすじ
黒霊廟山――。
クレーデン王国で“死地”と恐れられる、呪われた辺境の山。
濃い瘴気と凶悪な魔物が棲みつき、生きて帰った者はいないと言われるその山で、銀髪の少女リヴはたった一人、のんびりと暮らしていた。
薬草を摘み、薬を作り、精霊たちと遊ぶ静かな日々。
三年前に祖母を亡くしたあとも、リヴは変わらず穏やかに過ごしている。
ただ一つ、彼女自身が知らないことがあった。
それは、自分が既に失われたはずの“古代魔法”を扱う、伝説級の存在だということ。
ある日リヴは、山の中で瀕死の青年を拾う。
黒髪と銀の瞳を持つ青年――ラルス。
彼は“一介の騎士”を名乗るが、その正体はクレーデン王国第二王子だった。
リヴの常識外れな治癒魔法を目の当たりにしたラルスは、この少女の危うさに気づく。
だが当の本人は、
「だいじょーぶだよ〜」
とのんびり笑うばかり。
伝説級の魔物すら「くまさん」と呼び、災厄級の結界を「おばあちゃんのお守り」だと思い込むリヴに、ラルスの胃痛は増える一方で――。
これは、黒霊廟山で静かに暮らしていた“月のような少女”が、知らぬ間に人々を救い、世界を少しずつ変えていく物語。
そして、一人の王子がそんな少女に振り回されながら、どうしようもなく大切に思ってしまう物語である。