あらすじ

「お前の授業など、子守りの替わりだった」――王太子レオンハルトに婚約破棄を告げられた公爵令嬢エリーゼは、ただ静かに学習帳を閉じた。七歳から十五年間、彼に文字を、文法を、王家公文書の文体を、外交辞令を教え続けた令嬢である。王太子は知らない。即位演説草稿の起草も、隣国親書の翻訳も、勅令の校閲も、すべて彼女がやっていたことを。婚約破棄から三月。即位式の朝、王太子は自分の演説草稿を一字も読めなかった。弟王子も妹姫も補佐官も書記官も――彼女に教わった全員が、令嬢の去った王城で文字を失った。「習った覚えはない」と王太子は震えた。覚えていなかったのは、教師ではなく、教え子のほうだった。

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カクヨム
カクヨム2026/05/17
  • 現在の作品「字を教えるなど誰にでもできる」と捨てられた令嬢——三月後、王太子は即位演説を一字も読めなかった