あらすじ
風見灯は、ボートレーサー養成所で最下位に近い評価を受けていた。
スタートは遅い。
旋回は流れる。
整備も不器用。
そして何より、水面が怖い。
教官からは「恐怖心が強い。勝負勘に欠ける」と評され、同期たちとの差は開くばかりだった。
けれど灯には、ひとつだけ武器があった。
誰よりも水面を見る力。
風、波、艇の揺れ、ターンマークのわずかな変化。
他の者が見落とす一瞬の“道”を、灯だけは見つけることができた。
養成所を経て、B2レーサーとしてデビューした灯を待っていたのは、プロの厳しい現実だった。
見えているのに届かない。
届いたと思えば迷う。
初勝利を掴んでも、フライングで崩れる。
それでも灯は、水面から目を逸らさない。
師匠となる三島沙耶。
センターから道を作る月城澪。
女子界の最強女王・天堂朱里。
1号艇でも6コースへ行くアウト屋・轟朱音。
6号艇でも内へ入るイン屋・入江真白。
そして、現役最強レーサー・黒羽宗一郎。
数々の強者たちと出会い、負けて、迷って、傷つきながら、灯は少しずつ自分の走りを見つけていく。
養成所、B2、B1、A2、A1。
G3、G2、G1、そしてSGグランドクラウンへ。
これは、才能なしと呼ばれた少女が、怖さを抱えたまま水面を走り、やがて女子レーサーの伝説になるまでの物語。