あらすじ

五歳児を集めた洗礼式で、俺の触れた水晶が強烈な光を放った。 教会中が真っ白になるほどの鮮烈な光が収まった後、父曰くの「なぜかキラキラ輝くエフェクトのようなもの」がが俺の周りを彩っていたという。侍従曰く「まるで天使が降臨したかのようでした」。 なんだそれ。 みなが唖然とする中、司教が感動に打ち震えながら叫んだ。 「なんと!特殊スキルです!120年ぶりに特殊スキルが授けられました!」   俺は顔には出さなかったが、内心「やった! 勇者だ! 」と浮かれた。 厨二だというなかれ、五歳児なんてそんなものだ。 だが神は無情だった。静まり返るホールに、司教の興奮に上ずった声が響き渡る。 「なんと……スキル名は『美』! 『至上の美』です! 」 俺はポカンと口を開けた。 スキルの名は「美」。 聞き間違いでもなんでもない、「美」。なんなら「至上の」が付いている。 俺の口から高位貴族の子弟に到底相応しくない言葉が飛び出した。 「は? 今なんて?! ふざけてんのかこの野郎! 」 「やはりそのお美しさは天に愛されたゆえだったのですな! いやはや、天使が実在しようとは……っ! 」 いや、おかしいだろう司教! 膝まづいて祈ってる場合じゃない。正気に戻ってくれ! 司教はそのまま膝で俺にじり寄り、うっとりとした表情で俺を見つめた。なんなら涙ぐんでいる。 いや、マジでなんだこれ? 勇者じゃねえのかよ!  俺の手を取ろうと伸ばされた司教の腕を、俺はさりげなく払いのけた。 盛り上がる会場とは逆に、俺も含め俺の家族は全員無の境地だ。 それはそうだろう。男に「特殊スキル美」。いったい何の役に立つというのだ。 父は頭を抱えた。 「どうしてこんなことに……」 うん。それを言いたいのも俺だ。マジで勘弁してくれ女神!  「美」だって?  それがスキルだというおかしさはともかく、そんなもん聖女だとか王妃だとか、とにかく女性に与えるべきだろう。傾国の美女は女性だから物語になるのだ。傾国の美男子なんぞ、ヒモや男娼になる未来しか見えない。いずれにせよロクなもんじゃない。 俺は「剣術」だとか「体術」、百歩譲って「敏捷」などを期待していたのだ。だって強そうだし。 特殊スキルっていうから「勇者」かと思ったのに、まさかの「美」? これはあり得ない特殊スキルを与えられたあり得ない美貌を誇る「平凡に生きたい」令息のお話。

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カクヨム
カクヨム2026/05/17
  • 現在の作品特殊スキル「美」を持つ令息は、平和に生きるために周辺諸国を制圧したい。