あらすじ
1990年の背徳の夜から、2040年の冷たい病室へ。AIが脳をハッキングする世界で、孤独な老女が遺した「圧倒的な真実」とは。
1990年、バブル絶頂の東京。
32歳のアンナは、優しい夫・タクヤを欺き、その親友であるレイと背徳の情事を貪っていた。「完璧な家庭」の真ん中で二人の男をコントロールする狂気的な全能感。それが彼女の日常だった。
しかし、最新の科学(DNA鑑定)という「真実の証拠」の前に、その偽装はあっけなく完全崩壊する。子どもたちの消息も断ち、すべてを失ったアンナは狂気へと落ちていった。
──それから50年近き歳月が流れた、2040年。
終末期医療病棟の片隅で、老いたアンナの命が尽きようとしていた。その頭部には、脳の神経ネットワークを書き換え、安らかな死の幻影を見せる最新の「脳ハッキング装置」が接続されていた。
元夫のタクヤは病院からの訃報を冷淡に切り捨て、孤独に死んだ元妻を「自業自得の哀れな女」だと嘲笑う。無関心という完璧な復讐を果たしたはずだった。
だが、彼らの子どもたちが選んだ未来は、タクヤの、そして読者の予想を遥かに超えるものだった。
脳を欺く「偽りの楽園」か。
母が遺した「圧倒的な真実(エビデンス)」か。
昭和歌謡『人生いろいろ』のメロディに乗せて、2040年の最先端テクノロジー世界に、一人の女の凄絶な執念と愛が、圧倒的なカタルシスとなって鳴り響く。
(全四章・完結)