あらすじ
”深森信用金庫入庫3年目の職員、朝倉匠。
彼の週2回の訪問先である花岡事務所の担当者が変わると告げられ、出会ったのは――”
「「頂戴します」」
と同時に言いながら交換した名刺に目を落とすと『経理部 花岡《はなおか》 奏《かなで》』という文字が目に入る。
「ん……あれ? 花岡?」
と匠が湧き出た疑問を自然と口に出すと、奏は悪戯がバレた子供のようにクスッと笑った後、少し恥ずかしそうに。
「やっぱり気付きます? ……社長、私の父なんです」
と、笑顔と共に告げた。
”彼女との出会いにより動き出す物語”
「……あの……もしこの融資を実行したら……」
……実行したらなんだろうか……と続く言葉が予想できず、匠は黙ったまま奥様の言葉を待つ。
「――私は主人と離婚して、田舎に帰ります。主人にもそう伝えてありますので」
”信用金庫の仕事を通して様々な人生と向き合いながら”
「遅くなってすみません」
と言いながら、ゆっくりと柔らかさを感じる動作で会釈をした後、その女性はやはりゆっくりとした動作でエントランスに入ってきた。
匠は女性が手に名刺ケースを持っていることを認識すると慌ててソファから立ち上がり、名刺交換をする。
受け取った名刺には『経理部 藤森《ふじもり》 芽依《めい》』と記されていた。
「これからよろしくお願いします」
と、芽依は目を細めながら眉尻が下がる特徴的な笑顔を見せながら、柔らかくそう言った。
”匠は2人の女性と徐々に距離を詰めていく”
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