あらすじ
IT企業の営業部に勤める田中悠(28)のモットーは、徹底した「省エネ」と「定時退社」だ。
熱血な上司の小言をかわし、同じく省エネ主義の同期・沙織とつかず離れずの快適な距離感を保つ。それこそが、自分の平穏を守る唯一の正義だった。
週の真ん中には、行きつけの『Bar 水際』で、大人の包容力を持つマスター・葵の淹れるハイボールと静寂に癒される。
――はずだった。
四月。前職がブラック企業だったという生真面目な新人・森結衣が同じチームに配属されたことで、悠の完璧な防壁に少しずつヒビが入り始める。
「田中さんって、本当は優しいんですね」
無邪気に距離を詰めてくる後輩。
さらに、仕事のデキる取引先の女性・理沙からの予期せぬアプローチや、絶対に領域を侵さなかった同期の沙織が残業後に見せた、ほんの少しの揺らぎ。
誰も拒まない。けれど、誰も踏み込ませない。
頑なに線を引いて生きてきた悠の「いつも通り」の日常が、四人のヒロインたちの熱量によって、ほんの少しずつ、けれど確実に変わり始めていく。
人との心地よい距離感を測りかねる、すべての大人のための、ビターで静かな日常系ラブコメ。