あらすじ
明治末期、没落した庄屋・景司は生活苦から、国の貸金制度の仕事を引き受ける。乏しい資金に悩む中、彼は蔵に眠る大黒像や刀などを資産として帳面に計上し、実体のない利息を生み出す方法に気づく。やがてその手法は拡大し、帳面の中でのみ増え続ける「金」は現実を上回る規模となる。妻・道子はその危うさを感じながらも、夫を信じて支え続ける。しかし新任の役人の目により不自然な増加が見抜かれ、厳しい監査の末に不正が露見。景司は役目も名も失う。すべてを失った二人は、再び土に向き合い、質素な暮らしを始める。虚構の繁栄を経て、本当の豊かさにたどり着く、静かな再生の物語である。