あらすじ
25歳。
カン・ミンジェにとって、その年齢は“失敗”を意味する数字でしかなかった。
デソンフラット222号室の安アパートで暮らす無職の青年。
山積みの請求書と、周囲からの冷たい視線に囲まれながら、希望も自尊心も失ったまま、停滞した日々を送っていた。
――だが、ほんの小さな善意が、彼の人生をすべて変えてしまう。
ある夜、ミンジェは空腹の中で残っていた最後のパンを、ジュン・アーと名乗る老女の物乞いに差し出した。
見返りなど求めていなかった。
しかし老女は、不気味な“口づけ”によって、彼の運命を書き換える。
その日を境に、ミンジェの声は絶対的な力となった。
彼の言葉を聞いた女性は、誰一人として逆らえない。
命令は拒絶されず、感情さえも抗えないまま、彼へと惹かれていく。
金。
権力。
そして、手の届かなかったはずの女たち。
すべてを容易く手に入れたミンジェだったが、その力は次第に彼の心を蝕んでいく。
どれほど多くを得ても、そこに本物は存在しない。
なぜなら、すべては“魔法の強制”によって手にしたものだからだ。
そんな彼の前に現れた唯一の例外――キム・ナリン。
純粋で、真っ直ぐな女性。
だからこそミンジェは願ってしまう。
彼女にだけは、自分の力で恋に落ちてほしくない、と。
その想いを守るため、ミンジェはナリンの前で、自らの言葉を抑え込もうとする。
これは、
“誰にも逆らえない声”を手にした男が、本当の愛と人間性を探し続ける物語。
そしてミンジェは、今も問い続けている。
この力は――祝福なのか。
それとも、受け入れるしかない呪いなのか。