あらすじ
『八度目だ。八度目の、私の処刑日だ。』
女子高生・藤宮詩織(ふじみや・しおり)は、放課後の図書室でうたた寝した、それだけだった。 気がつけば、彼女は乙女ゲーム『薔薇と銀月の誓約』の悪役令嬢――アデライド・フォン・ヴェルナール公爵令嬢として生きていた。
ゲームのシナリオでは、卒業パーティーの夜、王太子セオドアからの婚約破棄と国外追放、そして処刑が約束されている。
詩織は抗った。何度も、何度も。 策を練り、心を尽くし、王太子の不興を買わないよう微笑み続け、ヒロインを陥れたりもしなかった。
それでも、彼女は殺された。 一度目は毒で。二度目は転落事故で。三度目は冤罪で絞首台に。四度、五度、六度、七度――。
毎回、断罪の夜が終わるたびに、彼女の意識は《ゲーム開始の一年前》へと巻き戻される。記憶を、痛みを、絶望を、全部抱えたまま。
そして、今日。
「――もう、いいや。」
八度目の卒業パーティー。婚約破棄を叫ぶ王太子の前で、悪役令嬢の仮面が、ゆっくりと外れていく。 七回の人生で覚えた、すべての毒。すべての悪事。すべての証拠。
「次に話すのは、わたくしの番ですわよね、殿下?」
これは、七回殺された女子高生が、八回目にして全部を取り戻す物語。 微笑む口の端は、もう震えていない。