あらすじ
王立リオラ学院。
落第ぎりぎりの薬術科2年のフィリア・ノクスレイが作る薬は、いつも薬効が足りないと周囲から笑われていた。
ある日、いつものように人目を避けて古い温室で昼食を取っていたフィリアは、学院に名を知らない者はいない魔術科の首席――ノア・クラウゼルの独り言を聞いてしまう。
眠っても止まらない熱。
公式の薬では鎮まらない不調。
天才だからこそ誰にも言えなかった苦しみ。
その悩みは一般的な薬ではどうにもならないものだった。
落第ぎりぎりの失敗作と笑われたフィリアの薬だけが、ノアの苦しみに届くかもしれない。
相手は学院中の憧れである魔術科首席で、もともと目立つことが苦手なフィリアに、直接声をかける勇気はなかった。
だが、聴こえてしまった心の悩みは、彼が誰にも知られたくない弱さでもあった。
苦しんでいる人を放っておけないフィリアは、名を隠して学園の古い温室の『月庭棚』に薬を置く。