あらすじ

卒業式典の壇上で、婚約者である王太子アルノルトが高らかに宣言した。 「エレノア! お前との婚約を破棄する! 次代の聖女はリリアだ!」 割れんばかりの拍手の中、派手な光魔法を披露するリリアを見つめながら、侯爵令嬢エレノア・セレスティアはただ静かに立っていた。 怒りも、涙も、出なかった。 ただ少し——疲れた気持ちになっただけだ。 翌日、王家からの通達が届く。 辺境修道院への赴任命令。 要するに、厄介払いだった。 しかし辺境で待っていたのは、ボロボロの修道院と、病に倒れる孤児たち、汚染された井戸、枯れ果てた畑だった。 エレノアは派手な奇跡を使わない。 光の柱も、黄金の演出も、何もない。 ただ黙って、水を浄化し、土を癒し、傷を治し、パンを焼く。 「これくらい、普通のことです」 本人はそう思っている。 でも——数日で井戸が澄み、枯れた畑に芽が出て、病の子供たちが笑顔で走り回り始めた。 噂はたちまち広がった。 〝奇跡の修道女様〟が辺境にいる、と。 やがてエレノアのもとには、遠くの村からも病人が押し寄せ、戦争帰りで聖女を信じない辺境伯カイルでさえ、その目で見た現実に言葉を失う。 一方、王都では事態が悪化していた。 リリアが何度浄化しても、川の汚染が数日で戻る。 疫病が広がり、民が倒れていく。 そしてついに、アルノルトが辺境まで頭を下げに来る。 「戻ってきてくれ……!」 だがその時エレノアの周りには、元気に走り回る孤児たちがいた。 彼女を慕う民がいた。 そして静かに前へ出る、一人の辺境伯がいた。 地味で、光も出ない、役立たずと呼ばれた聖女の——本当の奇跡が、今始まる。

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小説を読もう2026/05/16
  • 現在の作品「役立たずの聖女」と婚約破棄された私、辺境では一日で五百人を救ってしまいました