あらすじ

親が破産し失踪した夜から、俺の話は始まる。  大学を中退し、ホストになり、売れず、客引きになり、スカウトになり、歌舞伎町の立ちんぼを仕切るようになった。転落ではない。地形に沿って流れただけだ。気づいたらそこにいた。  深夜二時過ぎ、元証券マンの元親友・坂田慶介と、半グレの元締め・外村が待つ五十五階へ向かうエレベーターに乗っている。慶介には三千万の借金がある。俺には、俺がこの街に連れてきた女・柚子への、名前のつかない何かがある。  エレベーターが上昇する。慶介が理論を立てる。 「歌舞伎町はブラックホールや。引力が強すぎて、入ってきたもんは光でも出られへん。でも本当に怖いのはそこちゃうねん。落ちてることに気づかへん、いうことや。周りも全部同じ速度で落ちてるから、相対的に静止して見える」  五十五階から地上へ、地上から三浦の夜の海へ、海から再び五十五階へ。一夜の移動の中で、七年分が解体されていく。  愛していたのか。管理していたのか。守っていたのか。利用していたのか。  どちらでも俺は最低で、違いは俺が最低である理由だけだ。  引力は、愛の別名だ。  歌舞伎町を舞台に、名前のつかない七年間を生きてきた男二人の、一夜の話。 ※ なお本作品には直接的な暴力・性描写はありません。

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カクヨム2026/05/16
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