あらすじ
激しい雨が降り続く夜、死体を「美しい」と感じ、その記録を淡々と重ねる孤独な人間・澪(みお)。そして、そんな澪のすべてを傍らで冷徹に見つめ続ける謎の“観測者”・魅影(みかげ)。
他人に必要とされることの脆さや、世間が言う「普通」という言葉の曖昧さに冷めた視線を向ける澪は、最近になって「完成された美」よりも、どこか壊れゆくような「未完成の美」に惹かれ始めている自分に気づきます。
そんな中、突然の停電によって部屋は暗闇に包まれます。キャンドルの静かな炎を灯した二人の間で、いつもより少しだけ心の距離が近づくような、危うくも優しい会話が交わされていきます。
「お前は壊れるな」と珍しく執着や心配を口にする魅影に対し、澪は「もし私が壊れたら?」と問いかけます。返ってきたのは、雨音に紛れるような魅影の静かな覚悟でした。
夜が明ける頃、二人は互いの中に、決して他者には理解されない「未完成だからこそ美しい関係」を静かに確かめ合うのでした。