あらすじ
■ あらすじ
七瀬陽和は、誰にでも笑える女の子だ。クラスメイトにも後輩にも先生にも、いつだって同じ温度の笑顔を向ける。愛嬌の塊。みんなの太陽。——でも、その笑顔が本物かどうか、自分でも分からなくなる夜がある。
朝霧蓮司は、隣の家に住む幼なじみ。無愛想で不機嫌面で、褒めても「別に」、好意を向けても「かわいくねえし」。感情表現は赤くなる耳だけ。——でもこの男、陽和が好きなクリームパンの店を何年も覚えていて、黙って机に置いていくような不器用を平気でやる。
好きだと気づいていた。気づいていて、名前をつけなかった。名前をつけたら壊れると思ったから。「ただの幼なじみ」でいれば、隣にいられると思ったから。
——けど、限界は来る。
文化祭の夜、陽和が泣きながら走り出した時、蓮司の中から全部が消えた。プライドも恐怖も嫉妬も。残ったのは「探さなきゃ」だけだった。
雨の中、息を切らして見つけた先で、蓮司が絞り出した一言。
「——ほんとに出ていくなよ」
不器用な男の子と、みんなに愛される女の子。すれ違って、傷つけ合って、それでも手を伸ばす、全力で不器用な恋の話。