あらすじ

朝、通学路を業務中の早さで疾走して、電柱に、ふつうに、つっこむ。「業務、続行、します」と、無表情に自己申告して、また走り去る。中等部の管理アンドロイド・七瀬さんは、無表情のまま机を片手で持ち上げ、男子三人の頭上三センチを通過させる。日曜の商店街では、白い球体ロボが四体、同じタイミングで石畳を弾む。空には毎日、銀色のなにかが、いくつか浮いている。ここは、機械化学園特区。 ぼくの名前は、竹内雄太、小学六年生。趣味は写真を撮ること。 お父さんは、三年前から、ぼくと会えない場所で何かをしている。最後にくれた言葉は、「何が起きているか、ちゃんと見るんだ。そうすれば、こわくない――」。それだけ。 写真クラブには、無表情のアンドロイド、アール。教室の窓ぎわには、片想いの今村さん。図書室で、棚の同じ場所に手を伸ばし、彼女が無言で手をひいた、あの一瞬。公園で空を数える諸星のおっさん、軽トラのドリフトでUFOから救ってくれる坂本さん。誰もが、ふつうじゃない、けれど、ふつうに、この街で生きていた。 夏のある日、特区上空に「運用試験中の大型試験機」が降下する。母船が空き地に着地したとき、すべての機械たちが、なぜかぼくの周りに集まっていた。ぼくは、気づいた。ぜんぶ、お父さんが、ぼくのために、組んでいたんだ。 夜の屋台で、三年ぶりに、お父さんが、ふつうに、待っていた。提灯のあかりに、ぼくは、ファインダーを構えなおした。撮ろうか、と、思った。撮らなくても、よかった。でも、撮ろうと、思った。 シャッターを、ゆっくり、きった。 機械化学園特区の本日も、平常運転、だった。たぶん、来年も。

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小説を読もう2026/05/16
  • 現在の作品ぼくのとなりで、ぴこぴこ