あらすじ

五月の朝。三年ぶりに、彼女は俺の前に立っていた。 綾瀬美月——三年前の春に「さよなら」も言わずに転校していった、俺の幼馴染。彼女は今、丁寧に作られた笑顔で俺をこう呼ぶ。「佐倉くん、久しぶり」。三年前は「真くん」と呼んでくれた、その声で。 俺は気づいていなかった。三年前、父の闘病期に俺が向けた「迷惑をかけたくない」という線引きが、彼女を消した本当の理由だったことを。 彼女もまた気づいていなかった。自分の何気ない一言が俺の家族を壊したと信じ込み、東京で三年間ずっと自分を罰してきた——そのことを、本当は俺が一度も恨んでいなかったと。 転入してきた明るい少女・凜の登場で、俺と美月の歪な距離が浮き彫りになる。彼女は俺たち二人の間に立ち、こう言った。「美月、私はあなたの邪魔をしないよ。だから、あなたも、自分の邪魔をしないで」。 六月、梅雨。美月は学校を休み始める。彼女の妹・美咲が俺に告げた「お姉ちゃん、ずっと、真お兄ちゃんのこと、好きだったんだよ」の一言で、俺は初めて全てを直視する。俺の「優しさ」は刃だった。俺の「正しさ」が、三年間ずっと、彼女を曇らせていた。 真夜中の屋上、三年分の沈黙の最終地点で、俺は彼女に初めて「ごめん」と言う。彼女もまた、三年間消すことしかできなかった下書きLINEを、初めて送信する——「今日は、ありがとう。おやすみ、真」。 四十日間の贖罪の果てに、二人はいきなり恋人にはならない。代わりに、隣で生きていく対等な相棒になる。次の春までに、俺たちが何を見るのかは、まだ誰にも分からない。

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カクヨム
カクヨム2026/05/16
  • 現在の作品俺の「正しさ」が、三年前から幼馴染を曇らせていた〜三年ぶりに戻ってきた彼女と、初めて「ごめん」を覚えるまでの40日〜