あらすじ
触れた人間の「死ぬ瞬間」が視えてしまう──それが宮白雪音(みやしろゆきね)の呪いだ。
幼い頃から誰にも触れられず、手袋を二枚重ねにして生きてきた十七歳。友達もなく、恋愛など夢のまた夢。毎日ただ「視えないように」祈りながら、教室の端でひっそり息をしていた。
そんな雪音の隣に、ある朝転校生が座った。榊時雨(さかきしぐれ)。制服を着ているのに、どこか人間ではないような空気を纏う男。
廊下でぶつかった拍子に、雪音の素肌が彼の腕に触れた。視えるはずの「死」が来なかった。代わりに見えたのは、炎の中に立つ古い社と、白い装束の──自分に似た女の後ろ姿。
「ずっと探していました」
放課後、時雨はそう言って告げた。
「あなたは三百年前、この国に存在した最後の巫覡(かんなぎ)です。そして今、八百万の神が眠りから覚めようとしています」
呪いだと思っていた力が、神降ろしの器の証だったとしたら。
一度も触れられなかった私が、神様の花嫁候補に選ばれたとしたら。
──手袋を外したとき、世界はどんな色に見えるんだろう。
孤独な少女が「触れること」を取り戻す、再生と覚醒の現代神話。