あらすじ
婚約破棄を告げられた瞬間、伯爵令嬢エレナ・グランベルが見たのは、元婚約者の顔ではなく、会場の退場口だった。
王宮舞踏会の中央で「冷たい」と断じられ、公衆の面前で婚約を破棄されたエレナ。けれど彼女は泣くより先に、割れたグラス、止まりかけた楽団、怒鳴りかけた父、剣に手をかけた護衛を見ていた。
その判断に目を留めたのは、王宮近衛隊長ルシアン・ヴァルト。
翌日、エレナのもとへ届いたのは慰めの手紙ではなく、王宮儀典局・保安部からの臨時補佐の依頼だった。
「必要だから、お願いしています」
氷令嬢と噂されても、彼女は整える。席順、控室、給仕、楽団、近衛の半歩。
誰にも見えない仕事で王宮を守るうち、エレナは自分を見てくれる人たちと出会い、前を向いていく。