あらすじ
外科医・内山は、手術中に患者を救えなかった喪失感を抱えたまま深夜に帰宅する。唯一の家族である愛犬クロだけが、沈み込む彼を静かに迎える。その夜、部屋の中央に突如として空間の裂け目が出現し、内山はクロとともに異世界へと転落する。
目を覚ました内山がいたのは、人間の感情をエネルギー資源として利用する謎の施設だった。絶望や未練を「燃料」として抽出されかける中、クロが青銀の閃光を放って拘束装置を破壊し、内山を救出する。二人は施設から脱出するが、海へと投げ出され、見知らぬ世界の浜辺へ流れ着く。
そこで内山は、自らの意思をサイコロに委ねる能力者・ダイスと遭遇する。クロは青銀の光をまとい、戦闘時に骨格や四肢を変形させる異能を発現し、内山を守り抜く。やがて二人は、燃料不足に苦しむ村々を巡る中で、この世界が巨大都市によるエネルギー独占のもとに成り立っていることを知る。バイオ燃料の村では油藻培養槽が、地熱村では熱源配管が何者かによって意図的に閉塞されており、末端の人々の生活が静かに壊されていた。
医師として「壊れたものを治す」ことを信条とする内山は、クロとともに村々の問題を解決しながら、世界の中枢へ迫っていく。その過程で、施設で聞いた「抽出」「転移」という言葉の意味、自身がこの世界へ呼ばれた理由、そしてクロの身体に宿った青銀の力の正体が少しずつ明らかになっていく。
やがて辿り着いた巨大都市では、海水から水素を生成する膨大なエネルギー基盤の裏側で、人々の感情や絶望そのものが資源として管理されていた。さらに、そのシステムの根幹には、内山が現実世界で救えなかった患者とつながるある真実が隠されていることを知る。