あらすじ
連続殺人犯・比島誠司は、法廷で静かに笑っていた。
銀縁眼鏡の似合う、穏やかな男。
怒鳴らない。感情を荒げない。誰にでも優しい。
どこにでもいるような“普通の人間”。
だが彼は、複数の女性を殺害していた。
判決を前にした法廷で、比島は語り始める。
——最初は、誰かに気づいてほしかっただけなんです。
小学生の頃、似顔絵を描くのが得意だった少年は、ある日、悪意なく描いた一枚の絵でクラスメイトを深く傷つけてしまう。
その日から比島は知ってしまった。
「本当」を描けば、人は壊れる。
以来、彼は“優しい人間”を演じ続けた。
空気を読み、感情を合わせ、誰にも嫌われないように生きる。
だがその一方で、壊れていく人間の姿にだけ、比島は“本物”を感じてしまう。
恋愛。
依存。
嫉妬。
崩壊。
愛されることを恐れながら、誰よりも愛を求めた男は、やがて人間関係そのものを壊し始める。
そして辿り着く、連続殺人。
これは、怪物の物語ではない。
誰にも嫌われないように生きた男が、
誰よりも人間を求め、
誰よりも人間を壊してしまった物語。