あらすじ
四度。
婚約者が、妹のもとへ去った回数だ。
ヴィオラはもう泣かない。泣き方を忘れたからだ。
修道院に入る支度をしていた彼女に、思いがけない打診が届く。相手は、四度妻を亡くした将軍。
二人は契約だけの結婚を選ぶ。恋はしない。期待もしない。それが、傷ついた者同士の釣り合いだった。
将軍の屋敷は、三年喪に服したまま時が止まっていた。廊下には、四枚の肖像画が並んでいる。
ヴィオラは、その家を少しずつ整えていく。死者を否定するためではない。生きている人が、息をしやすいように。
彼女がしているのは、屋敷の再建でも、商才の証明でもない。ただ、疲れた人を休ませているだけだ。
けれど、その淡々とした手つきが、止まっていた何かを動かし始める。
去っていった婚約者たちは、なぜか今になって振り返る。妹は、初めて自分の足元を見る。
そして、廊下の角で足音を止めた人がいる。
恋をしないと決めた契約結婚で、二人は何を見つけてしまうのか。
五度目を、彼女は望まない。では、彼女が本当に望むものは何なのだろう。