あらすじ
田舎の街道の峠にある甘味屋。そこに愛らしい娘が居た。両親の店を手伝って、幼い弟達の面倒をよく見る賢い娘だった。文字が読めない両親は、娘に名前を付けてやれなかった。ある日、店に立ち寄った役人から娘は名前を授かる。『香和』と名付けられた娘。その名は彼女が望んだ響きであったが、図らずも名付け親となった役人は、後に彼女を支える存在となる。店の借金が重くのしかかり、母は売られて行った。街道の先が豪雨で崩れ、客足が途絶えた。その崩れた街道の調査に赴いた一行に、甘味屋の主人は、今日で店を閉じる事を告げ、最後の饅頭を振舞った。峠の先の空き家に泊まるようにと教えて、店を畳んだ。この調査人の中に、香和の運命の相手となる若者が居る事は、まだ誰も知らない。翌朝、父親は山の仕事に就くと言って家を後にする。父親が留守になり、香和と弟二人の子供だけになった家に、人相の悪い男達が襲い掛かった。借金取り達だった。必死に姉を逃がそうとする弟達。逃げ切れず、捕まってしまう香和。連れ込まれた峠の空き家に居た、調査の一行に、香和と弟2人は救い出される。「饅頭のお礼」として。その一行の中の若者の一人は、この国の王太子であり、龍の加護を持つ、香和との魂の伴侶『契りの相手』であった。王太子は、香和を連れ帰り、父王に謁見し、香和の保護を願い出るが、「若過ぎる」事を理由に香和を里に帰すように諭される。反発する王太子。初めて父に従わないその必死な姿に何かを察した宰相は、香和に名前の由来を尋ねた。香和にその名を授けたその人が、この宰相であった。宰相は、香和とその弟の養育を王に願い出た。晴れて香和は王都に残る事が許された。王太子が成年となる儀式の日の夜、初めて二人は夫婦となった。香和は未熟な若さながら懐妊する。しかし、その子は育たなかった。香和も成人となり、晴れて夫婦となり、健やかな王子を儲けたが、王太子はその責務として、隣国からの領土侵犯の鎮圧に度々派兵せねばならず、その留守中に、王位継承権を持つ王弟一族が謀反に出るのではという噂が流れた。その危険を香和は知力で回避した。王が崩御し、恩ある側妃方を不本意にも殉死させる制度を止められなかった、新王と香和。側妃方の国への功績を、国の重鎮達に知らしめる為に、香和は重鎮方の奥方を巻き込んで、女性の識字率の向上を目指していく。幾多の戦乱を乗り越え、戦で命を懸ける男達の憂いの種の残して行く家族の先々を支える制度を作り、戦で親を失った子供を養育する制度を整え、産業を守り、交易路を整備し、隣国に脅かされない、強く豊かな国へと、夫と宰相家と共に、香和皇后は尽力していく。長男を計略で失う事になり、涙しながらも、奇跡的に誕生した長男の娘を育てていく。やがて、龍の加護を持つ者が必ず罹る病に夫が倒れ、別れの時が近付く。その夫の自分への愛の深さをこの時になって更に思い知る事になる。香和は、夫を亡くした。だが、息子がその悲しみを乗り越えて王として立ち上がる姿をみて、その背中に夫の姿を見たのだった。悲しみは深いが、前を向いて、息子と共に更なる国の発展目指して行く、甘味屋の娘。香和皇后の人生の物語。