あらすじ
高校2年生・藤代しおり(ふじしろ・しおり)。
取り柄は「字がきれいなこと」と「人の話を聞くのが上手なこと」。それくらい。
ある放課後、親友の夏川ひなたから、いきなり手を握られて頼まれてしまう。
「ねえ、しおり。お願いがあるの。――わたしの代わりに、ラブレター書いてくれない?」
ひなたが想いを寄せる相手は、三年の冬野透先輩。
文芸部の、本ばかり読んでる、静かな人。
ふたつ返事で頷いたしおりには、ひなたに言えない秘密があった。
冬野透は、中学三年の図書室で、自分が落とした文庫本を黙って拾ってくれた、たったひとりの男の子だったのだ。
「わたしの本当の気持ち、混ぜちゃ、ダメだよね」
代筆を重ねるたび、嘘は丁寧になっていく。
そして、嘘の中にだけ、わたしの本当の好きが少しずつ滲んでいく。
届かない場所から、誰にも気づかれないように。
わたしの恋は、いつも、三番目に呼ばれる。
――これは、親友のために嘘をつき続けた女の子が、最後にたった一行だけ、本当のことを書いてしまうまでの、ささやかで、痛い、二度とない一年間の物語。