あらすじ
山中に建つ古い洋館、霧雨館。
出版社の新人編集者・真柴悠は、亡き作曲家・雨宮宗一郎の遺稿整理のため、元ピアノ調律師の白瀬透子とともに館を訪れる。
館の中央にある時計塔は、十一時二十分で止まっていた。
集められた相続関係者たちに告げられた条件は、ただ一つ。
「失われた第五楽章を見つけた者に、霧雨館の真の相続権を認める」
その夜、真柴は音楽室へ向かう人影を目撃する。
直後に響く、低いラの音。
遅れて聞こえる金属音。
そして、短い悲鳴。
閉ざされた音楽室の中で発見されたのは、七年前に失踪したはずの男の死体だった。
現場には、割れた懐中時計と、『霧雨館組曲 第五楽章』と書かれた楽譜。
けれど白瀬透子は言う。
「この部屋は、まだ演奏の途中です」
音、時計、楽譜、そして沈黙。
霧雨館に隠された罪が、十一時二十分に再び鳴り始める。