あらすじ
PKKギルド《青い果実》に所属する大剣使いパタは、元PKである少女レイラを庇ったことで、ギルドを追放される。居場所を失った二人は旅の途中、吟遊詩人兼料理人を名乗る青年、シェフと出会う。飄々として掴みどころのない男だったが、戦闘が始まった瞬間、その空気は一変する。
「歌魔法」。旋律に魔力を乗せ、敵を制圧する特殊な力。その力は強力すぎるがゆえに、使用者自身を壊していく危険な力でもあった。戦いの最中、暴走しかけたシェフは静かに告げる。
「もし俺が正気に戻らなかったら、殺してくれ」
死を受け入れたようなその姿に、パタは強い違和感を抱く。
やがて三人は、北方都市オイタリア近郊にある古びた食堂《ラルド亭》へ辿り着く。
店主ラルドは無愛想で口うるさい男だったが、事情を知った上で三人を住み込みで雇い入れる。
温かいスープの匂い。仲間の声。「おかえり」と言われる食卓。
それまで「帰る場所」を知らなかったシェフたちは、少しずつ「生きて帰りたい」と思うようになっていく。さらにラルド亭には、行き場を失った者たちが少しずつ集まり始める。魔力暴走に苦しむ少女、戦場帰りの兵士、追われる旅人――傷を抱えた人々は、シェフの歌とラルドの料理に救われていく。「帰る場所」になったからこそ、彼らはもう逃げるだけでは済まされなくなる。
しかし、歌魔法を危険視する中央兵団と、賞金目当てのPKたちが彼らを追い始める。
仲間を巻き込みたくないと、一人で全てを終わらせようとするシェフ。
そんな彼へ、パタは言う。
「逃げるだけじゃ守れない。帰る場所のために戦え」
これは、居場所を失った者たちが一つの食堂で「帰りたい場所」を見つけ、死ぬためではなく、「帰るため」に戦う者たちの物語。