あらすじ
季節の織り糸
春は
まだ冷たい風の中に
ひとすじの若葉色を織り込んでいく
名も知らぬ花が
道ばたで小さく笑うたび
眠っていた心の糸がほどける
夏は
陽だまりの匂いを抱えながら
青空へ白い雲を縫いつける
蝉の声は激しくても
夕暮れには
誰かを想う静けさが残る
秋は
金色の光を指先にまとい
落葉を一枚ずつ時間へ返していく
遠ざかる鳥の影に
言えなかった言葉まで揺れて
胸の奥で淡く熟していく
冬は
透明な夜を深く編みながら
吐く息を星に変える
凍えた手を重ねれば
ぬくもりだけが
次の春へ続く糸になる
そして季節は
見えない機(はた)の音を響かせ
今日という布を
静かに織り続けている