あらすじ

本作「お花畑の告白」は、『ザラメ砂糖三代記』、エス家の血脈が紡ぐ、知性と執着、そして死生を超越した愛の変遷を描くクロニクルの中でも、もっとも重要な「まさ子の恋」を描いた短編です。 今後、本作の周囲を埋めるような形で、話がつながり、『ザラメ砂糖三代記』の形になっていく予定、です。 【第一世代:黎明の番い】  物語の起点は、弁護士エスと秘書いずみ。  弁護士を「どぶさらい稼業」と言い、紛争というドブ水の中から「人間の善性という宝石」を拾い上げるという奇跡を信じる、しかし実態はただのクズ男であるエス。  いずみは所内での孤立を厭わずそんなエスの専属秘書を通し、後に刺傷事件で車椅子生活となった彼を支えるため自らも弁護士となり、エスとともに事務所を出て独立します。エスの介護と生まれたばかりの長女(葵)の世話と司法試験の勉強を同時にこなす超人的な生活を目の当たりにした親友のマキが思わず泣いてしまうほどの、実務能力者でした。  二人の愛は、いずみによるエスの介護を名目とする過剰なまで奉仕とその重すぎる愛情を平然と受け入れるエスのクズッぷりにより成り立つものです。いずみはエスに自らの熟し切った身体を厳しく緊縛させ、エスの欲望を一身に受け止めることで、逆に彼を縛っていたのです。  これがエス家の女の闇として代々伝えられる、奉仕による支配の実態です。 【第二世代:完成された超人と統治】  いずみの娘・葵は、うっかり東帝大模試で全科目満点を叩き出してしまう知性と、天性の愛くるしさによるカリスマを備えた「太陽」としてこの世に降臨します。彼女は通っている女子校の文芸部長として、高校生の部活の範疇を超えた「世界コミケ」を企画して成功させ、そして後に日本人女性初の無信仰黄色人種アメリカ大統領という何が一番すごいのか分からない立場で、同国を解体し、これを中核とする世界政府を樹立して、その初代総裁という人類の最高権力者へと登り詰めます。ただしその支配の理念は暴力ではなく、太陽である自らが超人たる能力で全人類へ奉仕することによる支配でした。  人知を超える存在となってしまった彼女を、それでも人間の世界に繋ぎ止めるのは、愚直な大バカ野郎である夫、和樹(かずき)。葵は自らを身も心もきつく縛って現世に留まらせる存在として彼を求め、エス家の女の業を継承します。  その裏では、天才ハッカーである弟・邦明(くにあき)が影の守護者として姉の統治を支え続けました。 【第三世代:深淵のゆるふわと永遠の愛】  物語はやがて、葵の長女凜、次女茜、三女まさ子の三人娘(この上に少し歳の離れた長男の享(とおる))の代へ移り変わります。  三人娘はそれぞれ10か月違いの年子であり(次女茜と三女まさ子は5月生まれと3月生まれの同学年)、葵がどれだけ和樹に頑張らせたのかと、年頃になったら娘達けっこう恥ずかしいんだぞ、と。日ごろ葵は、娘達に、とっても大きな愛情をお父様が下さって、あなた達が生まれました。と言われ続け、真面目に育ったのが長女の凜。良くも悪くもエス家の人間として世間から色々言われることへの反発から中学デビューでギャル化していくものの最も純真無垢な心を持つ次女茜。  そして、葵の権力の継承とは別に、エス家の女の闇という深すぎる情念を最も受け継いだのが、ゆるふわぽやぽやな見た目の可憐な末娘、まさ子でした。彼女が愛してしまったのが、母葵の弟である邦明叔父。その許されない恋心が第三世代の物語の中心となっていきます。  やがてまさ子の邦明に対する献身は、人の生死を超えて魂を救う異次元の最新情報技術の確立に繋がり、その後の世界の支配体制に多大な影響を与えていくのでした。 【総括:ザラメ砂糖とは】  カステラの底に敷かれた湿ったザラメ砂糖のように、一族の人生の底には常に「濃密な甘い執着」が沈殿しています。いずみが種を撒き、葵が世界という庭を造り、まさ子がその最奥で魂を救済する。三代を経て、一族の「業」は人類の営みと交わり、そしてさらに次代へと引き継がれていくことでしょう。

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カクヨム2026/05/14
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