あらすじ
婚約破棄は、終わりではなかった。
——世界そのものが、「別の物語」へと切り替わる、始まりだった。
公爵令嬢オフィーリアは、長年「悪役令嬢」として扱われてきた。
王太子の婚約者でありながら、正論を言えば「冷たい」と嫌われ、現実的に動けば「意地悪」と断罪される。
愛され体質のリリアが何をしても許される一方で、オフィーリアは存在するだけで場の悪意を引き寄せた。
(おかしい。ずっと、何かがおかしかった)
違和感を抱え続けたその夜——舞踏会の場で、王太子エドガーはオフィーリアに婚約破棄を宣言する。
完璧な「テンプレ断罪」。
しかし、婚約破棄が成立したその瞬間、世界が変わった。
音楽の熱が消えた。
人々の目から、夢見るような光が消えた。
「かわいそう」という感情論が通じなくなり、代わりに「証拠は?」「責任は?」という言葉が飛び交い始める。
この世界には「ジャンル補正」が存在した。
婚約破棄までは「恋愛ジャンル」——愛される者が勝ち、感情論が正義で、偶然が主人公に味方する世界。
そして婚約破棄を境に、世界は「政治劇ジャンル」へと移行した。
実力。根回し。利益。責任。
それだけが結果を決める、現実の舞台へ。
リリアの「愛され補正」は消え、エドガーの「主人公補正」は消え——そしてオフィーリアの「悪役補正」もまた、消えた。
残ったのは素の実力だけ。
財政、外交、派閥調整——「悪役令嬢として邪魔だった」その全部が、今度こそ本当の武器になる。
宰相は言った。「ようやく世界が正常になったか」と。
これは逆転劇ではない。
ジャンルが変わっただけで、オフィーリアはずっと、正しかった。