あらすじ
建国祭の夜、伯爵令嬢リナリアは王太子から大勢の前で婚約破棄を告げられた。
隣には、民に人気の聖女。
周囲には、嘲笑する貴族たち。
誰もがリナリアの没落を疑わなかった。
けれど、王宮の末席官吏である彼女には見えていた。
王太子の肩に宿る【王太子】の称号が、腐って落ちかけていることを。
この世界では、身分も職業も加護も、すべて【称号】として人の肩に宿る。
称号は権利を与える。魔力を与える。社会的信用を与える。
だが、その裏には必ず義務がある。
民を守らない王太子。
祈りを私物化する聖女。
税を横領する徴税官。
責任を果たさない貴族たち。
義務を果たさず、権利だけを貪った称号は重くなり、最後には持ち主を喰らう。
リナリアは静かに告げた。
「殿下。それは婚約破棄ではありません。王太子資格の自己放棄です」
その瞬間、王太子の肩から【王太子】が落ちた。
地味で融通の利かない“称号管理官”と呼ばれていた令嬢は、やがて灰冠の辺境伯グレイと出会う。
彼は義務を果たしすぎたせいで、無数の称号に押し潰されかけている男だった。
名ばかりの貴族から称号を剥がし、働く者へ正しい名を返す。
押しつけられた役割に苦しむ者の肩を軽くする。
そしてリナリア自身もまた、「役に立つから愛される」という呪いから自由になっていく。
これは、肩書きが人を潰す国で、ひとりの令嬢が人々の名前を取り戻す物語。
婚約破棄から始まる、称号剥奪ざまぁ×辺境伯溺愛×異世界お仕事改革ファンタジー。