あらすじ

酒場は嫌いじゃない。 依頼帰りの冒険者が騒いでいて、酒臭くて、床はべたついている。 品のいい場所ではない。 でも、こういう場所にいると時々、昔を思い出す。 「ミーナさんって、長いんですか? 冒険者」 向かいの席に座った新人が、木杯を片手にそんなことを聞いてきた。 まだ新しい革鎧。 傷の少ない剣。 まだ何も知らない目。 見ていると、少しだけ昔の自分を思い出す。 「まあ、それなりに」 「いいですよねぇ、冒険者って」 新人は酔っているのか、楽しそうに笑った。 「いろんな場所に行けるし、魔物倒したり、お宝見つけたり。やっぱ夢ありますよ」 その言葉に、思わず笑ってしまう。 「……夢か」 木杯を傾ける。 安酒の匂いが鼻に抜けた。 懐かしい匂いだった。 「冒険者なんて、ろくな仕事じゃないよ」 新人はきょとんとした顔をした。 「え?」 不意に、遠い記憶が蘇る。 革の匂い。 馬の匂い。 焚き火の煙。 季節が巡る頃になると、村へやって来た行商隊。 そして、その護衛をしていた、一人の冒険者。 私は小さく笑った。 「……昔ね。そういうのが口癖のおじさんがいたんだ」 ドゥガおじさんは、会うたびにそう言っていた。 冒険者なんて、ろくな仕事じゃない――と。

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小説を読もう2026/05/14
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