あらすじ

ヴェッツリ伯爵令嬢クリスタリーナは、千年続く吹きガラス職人の家に生まれた。王宮のステンドグラス、薬瓶、温室の硝子板、シャンデリアの結晶——王家の光を司る一族である。
婚約者の王太子は彼女の仕事を「砂を溶かしただけのもの」と笑い、婚約を破棄した。「ガラスなど工房の下働きの仕事だ。貴族の令嬢が手を汚すものではない」
左様でございますか。クリスタリーナはそう答え、王宮工房から自家の吹竿《ふきざお》と原料配合書をすべて持ち帰り、家業を畳んで南方の港町ヴェルナへ移った。
半年後、王宮のステンドグラスが冬の嵐で割れた。誰も継ぎ方を知らない。薬瓶の在庫が尽きる。温室の冬野菜は霜に枯れ、シャンデリアの結晶が落ちて宴の卓を切る。冬の風が、王宮の窓から吹き込み続ける。
「ガラスは、息を吹き込んだ者の温度を、千年覚えています」

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2026/05/14
  • 現在の作品「ガラスなど砂を溶かしただけのもの」と王太子に侮辱されました——王宮の窓から、冬の風が吹き込みます