あらすじ
王宮お抱えの針子として三年間働いてきたリーゼ。孤児院育ちの彼女は、誰にも顔を覚えられない影のような存在だった。唯一の取り柄は裁縫の腕。そして唯一の秘密は——王太子クラウス殿下への、届くはずのない想い。
ある深夜、殿下が仕立て部屋に現れ、告げた。
『私の婚礼衣装を縫えるのは、お前だけだ』
相手は社交界の華、完璧な公爵令嬢。その花嫁衣装を縫えという残酷な命令。けれどリーゼには断る術などなかった。
『お前の縫い目には、祈りがある』
殿下はそう言った。三年間、一針一針に込めてきた想い。届くはずがないと諦めていた祈り。それに気づいているかのような言葉に、心が揺れる。
やがて明かされる、婚約に隠された真実。嫉妬に燃える公爵令嬢の妨害。そして——殿下が本当に望む「花嫁衣装」の意味とは。
千の針目に込めた祈りは、届かないはずだった。
けれど想いは確かに、あの方の心に届いていて——。
影のような針子と王太子が紡ぐ、祈りと愛のシンデレラストーリー。