あらすじ
王都騎士団専属回復師・セレナは、重傷者を何十人も同時に救えるほどの希少な治療能力を持ちながら、その力を“便利なもの”として当然のように搾取され続けていた。
徹夜治療は当たり前。
魔力が枯渇しても休みはなく、戦果報告では功績を消され、それでも副団長アルドから返ってくるのは「お前しかできないんだから仕方ないだろ」という言葉だけ。
感謝されることにも、労わられることにも、いつしか期待しなくなっていたセレナだったが、辺境砦壊滅寸前の報告を受け、限界状態のまま追加派遣を命じられた瞬間、ついに心が折れる。
「……嫌です」
初めて命令を拒絶したセレナの前へ現れたのは、辺境砦指揮官レオハルトだった。
「立っているのも限界だろう」
誰一人として気づかなかった疲弊を、一目で見抜かれてしまったセレナは、そのまま辺境へ同行することになる。
そこは王都とはまるで違う場所だった。
無理をするなと言われる。
温かい食事を渡される。
治療をすれば、兵士たちが頭を下げて「助かりました」と礼を言う。
ただそれだけの当たり前が、セレナには痛いほど眩しかった。
そんな中、辺境を襲う大規模魔獣災害。
極限状態の砦で、セレナはついに隠し続けていた本来の力――数百人規模を同時治療する広域治療結界を解放する。
その圧倒的な力によって辺境防衛は成功するが、同時に王都は知ることになる。
自分たちが、“国宝級の回復師”を使い潰しかけていたことを。
慌てて迎えに来たアルドへ、セレナは静かに告げる。
「ここでは、治療師ではなく、人として扱ってくれるので」
便利な道具として生きることを強いられていた回復師が、辺境で初めて居場所を得る、ざまぁ&救済ファンタジー。