あらすじ
第二王子シリル・レイヴァルトは、ある夜、王宮から姿を消した。
目を覚ました時、彼は人の姿も、声も、魔力も奪われ、小さな白い犬の姿に変えられていた。
誰にも自分が王子だと伝えられない。
王宮へ戻ることもできない。
そんなシリルを拾ったのは、見習い魔導師の少女フィオナだった。
フィオナは彼をただの犬だと思い、「ノクト」と名づける。
けれど、ノクトはどこか普通の犬ではなかった。
抱き上げれば怒り、可愛いと言えば睨み、床を叩いて何かを伝えようとする。
やがてフィオナは、紙に書いた言葉をノクトに選ばせながら、彼の意思を少しずつ拾い上げていく。
『兄上』
『王都』
『危ない』
その言葉の先にいたのは、行方不明となっていた第二王子シリル。
そして、彼を奪った黒い封印と、王宮に潜む陰謀だった。
声を失った王子は、言葉を拾う少女と出会い、兄のもとへ帰るために歩き出す。
奪われた名を。
奪われた声を。
奪われた姿を。
そして、自分が自分であるという誇りを取り戻すために。
白い犬として拾われた王子と、彼の声にならない言葉を見つけた少女の、帰還と再生の物語。