あらすじ
十年前の水害で現町を離れたレトリスは、古いハザードマップを作り直すため、役所の防災担当として故郷へ戻ってきた。説明会で再会したのは、かつて約束の場所へ来なかった少年、今は青鞄電子堂を営むガニーロ。彼女は彼を見るなり、「世界で一番嫌いな人」と言い放つ。
ところが、レトリスの蒼い鞄に入っていた未完成の電子基板が、昔の録音や短文メモをつなぎ合わせ、本人たちが隠してきた想いを妙に大げさな文章として印字し始める。嫌いなはずなのに気にしていたこと、渡せなかったペアカップ、十年前の雨の日に止まったままの約束。笑いに包まれながら、町の人々は少しずつ過去の空白へ向き合っていく。
喫茶ペアカップ、青鞄電子堂、旧地下避難施設サブマリン、そして危険箇所の残る商店街。レトリスとガニーロは仲間たちと町を歩き直し、危険を隠す地図ではなく、次に誰かが逃げ遅れないための地図を作ろうとする。これは、嫌いと言いながら誰かを想い続けた人たちが、町の道と心の逃げ道を書き直していく物語。