あらすじ

春の選抜甲子園大会の初戦、優勝候補の彩朋学院に完封勝利した堂島茜は、翌朝には旅支度を整えると、未だ夜も明ける前に出立した。既に、退学届けは担任の長島雄一に提出済みだ。後は、先生が上手く取り計らってくれるに違いない。ここから先は、覚悟の上の旅立ちだった。幼馴染みの柚木拓也にさえ、出家の件は伝えていない。右腕を三角巾で吊った状態でのスタートになるが、何となく晴れがましい気分になれた。首から下げた鑑札には「堂島汐音」という涼やかな響きの法名が記されている。今日からは沙門「汐音」として、新たな人生が始まる。無一物の生活になるが、不思議と不安は無かった。取り敢えず、汐音は、塩飽の外での唯一の知人・作家の有馬静寂先生を尋ねることにした。神戸への道すがら、目に映るもの全てが美しく、愛おしかった。今日から第二の人生が始まるのかと思うと、十七歳になったばかりの汐音の前途には、夢しかなかった。

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アルファポリス
アルファポリス2026/05/14
  • 現在の作品塩飽の真珠 Ⅲ  比延の月光(前編)