あらすじ

令和になって久しい頃、神保町では“純”を売りにした店が増えていた。純喫茶、純文学――その裏側で、既婚者の美幸は、雑居ビルの一角にある「文学少女の店」を訪れる。そこでは、顔も見せない少女たちが、一篇五百円で詩を売っていた。肉体ではなく、言葉を介した一夜限りの逢瀬。少女が差し出した恋の詩には、制汗剤の匂いのする同世代の男子への恋情が綴られており、美幸は他人の青春を覗き見たような痛みに襲われる。 昔から、美幸は欲しいものを正しく手に入れられなかった。本を取り違え、言葉を間違え、仕事でも周囲と噛み合わない。社会では「努力不足」と片づけられ、謝罪すら信用を失っている。帰宅した美幸を待つのは、AIを搭載したダッチワイフだけだった。人形に結婚指輪を嵌め、“僕モード”で愚痴をこぼすたび、AIは最適化された共感を返してくる。しかし、その言葉はどこか人工甘味料のように空虚だった。

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カクヨム
カクヨム2026/05/13
  • 現在の作品【短編】不純文学